1. はじめに
株価の乱高下が頻繁に起こる現代では、長期投資を辞めてしまう人が増加しています。市場の変動に対する不安や、短期的な利益を追求したくなる気持ちから、長期的な投資方針を途中で放棄してしまうケースが多く見られます。
実際、日本における長期投資型ファンドの平均保有期間は約3年半であり、これは長期投資と呼ぶには短すぎる期間です。長期投資は最低でも5年以上の期間を要し、その真のメリットを享受するためには、さらに長い期間にわたって保持することが推奨されています。
本記事では、なぜ多くの人が長期投資を途中で辞めてしまうのか、その理由を5つに分けて解説します。また、長期投資のメリットと、それを続けるための具体的なコツについても紹介します。
2. 長期投資を続けられない5つの理由
長期投資には多くのメリットがありますが、実際にそれを続けるのは簡単なことではありません。以下に、長期投資を続けられない5つの主な理由を挙げ、それぞれについて詳しく説明します。
1. 下落相場にメンタルが耐えられない
市場が大きく下落する局面に直面すると、多くの投資家は強い不安や恐怖を感じます。投資した資産が短期間で目減りするのを目の当たりにすると、「このままではすべてを失うのではないか」という気持ちが膨らみ、パニック売りに走ってしまうことがあります。これにより、回復のチャンスを逃してしまい、長期的な資産形成に失敗してしまうのです。
メンタルを保つためには、市場の変動は一時的なものであり、長期的に見れば回復する可能性が高いという信念を持つことが重要です。また、投資を始める際に、短期的な市場変動を予測することは非常に難しいため、長期投資では相場の一時的な下落を冷静に受け入れることが成功の鍵となります。
2. 含み益が出ると利益確定をしたくなる
投資によって含み益が出ると、早めに利益を確定して安心感を得たいという欲望が生じます。「利益が出ているうちに売ってしまいたい」と思うのは自然な心理ですが、この行動が長期投資のメリットを損なう原因になることがあります。短期的な利益確定は、複利効果を最大限に活かす機会を失い、資産が長期的に大きく成長するのを妨げます。
長期投資の成功には、含み益があっても焦らずに投資を継続する忍耐力が必要です。市場は上下を繰り返しますが、時間をかけて資産はさらに大きく成長する可能性が高いため、利益確定の誘惑に負けないことが重要です。
3. SNSやメディアの情報に惑わされる
SNSやメディアでは、株価や市場に関する様々な情報がリアルタイムで飛び交っています。特に、専門家やインフルエンサーの意見が目に入ると、短期的な市場の動きに影響されやすくなります。「この株はもうダメだ」「今が売り時だ」などの言葉に心が揺さぶられ、当初の投資方針を変更してしまうことが少なくありません。
こうした情報に左右されないためには、事前に自分自身の投資戦略をしっかりと立て、その方針を貫く強い意志が必要です。長期投資では、短期的な市場ノイズを無視し、計画通りに投資を続けることが大切です。
4. 予期せぬ出費が発生する
人生の中では、予期せぬ出費が発生することもあります。急な医療費や家族の支援が必要となる場合など、投資に回していた資金を現金化しなければならない場面が出てくることがあります。このような時には、投資を中断せざるを得なくなることがあるのです。
そのため、長期投資を行う際には、あらかじめ緊急用の資金を確保しておくことが非常に重要です。生活費や突発的な出費に対応できる資金を別途準備しておくことで、投資資金を急に引き出さなくても済む状況を作ることができます。
5. リスク許容度を超えた投資をしてしまう
多くの投資家が、リターンを追求するあまり、自分のリスク許容度を超えた投資をしてしまうことがあります。これにより、市場が下落した際に耐えきれずに売却し、損失を確定してしまう事態に陥ります。特に、株価の乱高下が激しい場合、自分がどれだけのリスクに耐えられるかを見誤ると、精神的に耐えられなくなることが多いです。
長期投資を続けるためには、自分のリスク許容度を正しく理解し、その範囲内で投資を行うことが不可欠です。無理に高リスクな商品に手を出すのではなく、自分が安心して保有できる資産を選ぶことが大切です。
3. 長期投資の5つのメリット
長期投資は、一時的な市場の変動に左右されず、資産を着実に増やすための強力な手段です。ここでは、長期投資を続けることで得られる5つの主なメリットを紹介します。
1. 複利効果で資産が増える
長期投資の最大のメリットは、複利効果を最大限に活かせることです。複利とは、得た利益に対してさらに利益が生まれる仕組みで、時間が経つほど資産の成長が加速します。例えば、配当を再投資することで元本が増え、次年度以降の配当も増えていく効果が得られます。
短期的には小さなリターンに感じるかもしれませんが、長期にわたるとこの複利効果が大きな差を生み出します。特に、5年以上の期間を持つと、その効果は顕著に表れます。
2. 変動リスクが軽減される
株式市場は短期的に大きな変動が起こることが一般的です。しかし、長期的に見れば、株価の上下動は平均化されてリスクが軽減されます。例えば、1年や2年の期間では市場が大きく下落することもありますが、10年、20年という長いスパンで見た場合、経済成長とともに市場全体が上昇する傾向にあります。
このため、長期投資は短期の変動リスクを軽減し、安定したリターンを得やすい投資戦略となります。長い目で見ることで、一時的な下落にも冷静に対処できるようになります。
3. 取引コストが削減される
頻繁に売買を行うと、手数料や税金などの取引コストがかさみ、投資利益が減少してしまいます。これに対して、長期投資は頻繁な売買を行わないため、取引コストを大幅に削減することができます。特に、何度も取引を繰り返す短期投資家に比べると、手数料や税金の負担が少なく、コストパフォーマンスが高い投資法です。
また、取引コストが少ないということは、複利効果を活かしやすくなるという点でも大きなメリットとなります。
4. 心理的ストレスが軽減される
短期的な市場の動きに一喜一憂することは、投資家にとって大きなストレスとなります。しかし、長期投資を行うことで、日々の市場変動に神経を使う必要がなくなります。短期的な価格変動に敏感にならず、あくまで長期的な成長を見据えることで、心理的なストレスを軽減できるのです。
特に、長期投資家は一時的な暴落や急騰に対して冷静でいられるため、感情的な判断を避けやすく、投資戦略に忠実に従うことができます。
5. 安定した収入を確保しやすい
株式や債券に長期投資することで、配当や利息などの安定した収入を得やすくなります。長期間にわたって株式を保有することで、配当金を定期的に受け取ることができ、特に高配当株や安定した業績を誇る企業に投資する場合、安定したキャッシュフローを得ることが可能です。
この安定した収入は、再投資に回すことでさらに資産を増やす効果を持つだけでなく、生活の資金としても活用できる点で大きなメリットとなります。
4. 長期投資を続けるための4つのコツ
長期投資のメリットを最大限に享受するためには、継続して投資を行うことが重要です。しかし、途中で辞めてしまわないためにはいくつかのコツがあります。ここでは、長期投資を続けるための4つの具体的なポイントを紹介します。
1. 明確な投資目標を設定すること
長期投資を成功させるための第一歩は、明確な投資目標を設定することです。投資をする理由や目的が不明確だと、途中で迷いや不安に駆られ、短期的な利益を求めてしまうことがあります。
目標が明確であれば、市場の変動や他の情報に左右されにくくなり、計画に基づいた投資を続けやすくなります。例えば、「老後資金を作るために20年間投資を続ける」や「10年後に住宅を購入するための資金を貯める」など、具体的な目標があるとモチベーションを維持しやすくなります。
2. 毎月自動積立投資を行うこと
長期投資を継続するためには、毎月自動積立投資を行う方法が効果的です。自動積立投資を利用することで、毎月一定額を決まった日に自動的に投資することができ、市場のタイミングに関係なく投資を続けることが可能です。
これにより、ドルコスト平均法（一定額を定期的に投資することで、購入価格を平均化し、リスクを抑える投資手法）が活用でき、価格が高い時には少なく、安い時には多く購入することが自然に行えます。また、自動化することで「今月はどうしようか」と悩むことがなく、投資を習慣化できます。
3. インデックス投資を選ぶこと
長期投資においては、インデックス投資を選択することが有効です。インデックス投資とは、特定の市場指数（インデックス）に連動する商品を購入する投資手法で、分散投資がしやすく、個別銘柄の選定リスクを避けることができます。
インデックス投資は、市場全体の成長に連動しているため、長期的な資産形成に適しています。また、管理コストが低いため、投資の負担が少なく、長期にわたって安定したリターンを期待できる点も魅力です。
4. 投資後は放置し、SNSも見ないこと
長期投資を成功させるためには、投資後は基本的に放置することが重要です。市場の短期的な動きに神経を使わないためにも、頻繁にポートフォリオを確認するのではなく、投資後は定期的に見直す程度に留めましょう。
また、SNSやニュースメディアで飛び交う情報に惑わされないことも大切です。短期的な市場の騒ぎや他人の意見に影響されて、焦って売買を繰り返すことが長期投資の失敗の原因になります。計画に従い、市場の一時的なノイズに振り回されないことが、成功への道です。
5. まとめ
長期投資は、時間を味方につけて資産を成長させる強力な手段です。しかし、株価の乱高下や日々の情報に左右されることなく投資を続けるには、しっかりとした戦略と忍耐力が求められます。本記事で紹介したように、長期投資を辞めてしまう5つの理由を理解し、それを克服するためのコツを実践することが重要です。
長期投資のメリットは、複利効果や変動リスクの軽減、取引コストの削減など、時間をかけることで初めて得られるものです。これを実感するためには、焦らずに投資を続ける姿勢が不可欠です。
以下のポイントを意識して、長期投資を成功させましょう：
- 市場の短期的な変動に惑わされず、明確な目標を持つこと。
- 毎月の自動積立やインデックス投資を活用し、分散と継続を意識すること。
- 情報過多の現代において、余計なニュースやSNSを避け、投資後は基本的に放置すること。
長期投資は忍耐が試される場面も多いですが、確かな計画と冷静な判断があれば、時間とともに確実に資産を増やすことができるはずです。市場の騒ぎに動じることなく、自分自身の投資方針を守り続けることが成功へのカギです。
